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人生は夕方から楽しくなる。ン、ほんとかな?


by Go-in-Kyo-san
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サッチェプとオハウ

サッチェプとオハウ_f0203324_15392533.jpg

写真はサッチェプ。アイヌの人たちが作る鮭の薫製だ。4月中旬に白老にあるアイヌ民族博物館から届いた。経緯はこうである。昨年の夏、北海道の友人にアイヌ民族博物館に連れて行ってもらった。そこで小さく切ったサッチェプを一袋、お土産に買って帰った。とても美味しかったので、昨年末、正月用にと思ってアイヌ民族博物館に1本注文した。ところが、今年の分は売り切れだと言う。鮭は冬用の食料だと思っていたので、その訳をたずねた。アイヌの人たちは晩秋に獲った鮭を冬の間半年近く寒風にさらして乾燥させ、春先になってチセの囲炉裏の上で薫製にするのだと言う。夏用の保存食なのだ。冬イコール食糧不足と考えるのは農耕民族的考え方で、狩猟採取民族のアイヌの人たちにとって、冬の森の中は見通しがよく、雪の上に獣の足跡などを見つけやすく、狩をしやすいのだそうだ。彼らにとって、必ずしも冬イコール食糧不足ではないらしい。

感心したのは、その製法だ。晩秋に獲った鮭を半年近く自然の寒風にさらして乾燥させ、春先になってチセの囲炉裏の上で薫製にする。なんと理にかなった方法ではないか。塩も使わないし、薫製小屋を作るわけでない。普段住んでいる家の中で作るのだ。農耕牧畜文明的に考えれば、なんとも効率の悪い方法であるが、自然の摂理に叶った方法だと思う。
アイヌ民族博物館の学芸員の人の説明を聞いて、自然を征服し、経済効率のみを追い求めている我々の生き方(農耕牧畜文明的、日本で言えば弥生文化的生き方)を、これでいいのだろうかと、考えさせられた。

そのサッチェプだが年末に予約して、出来上がりは来年の4月か5月ごろだと言う。出来上がったら、また連絡しますと言うことだったので、昨年末に予約したのだ。ほとんど忘れかけた頃、博物館から今年の分が出来上がりました、と言う連絡がきた。そして、予約どおり送ってもらった。

さて、肝心の味である。鮭独特の脂っこさと生臭さが全くなく、鮭の美味さが上品に凝縮されている。塩味は鮭の体内にある塩分だけで、それが美味さを上品にしている。サッチェプと比べると新巻きサケやスモークドサーモンなどはとても足元にも及ばないと、私は思った。
サッチェプとオハウ_f0203324_154154.jpg

サッチェプのアラを使ってオハウを作った。オハウは三平汁の原型だと言う。行者ねぎの代わりにニラ、根曲がり竹のたけのこの代わりにも孟宗竹のたけのこを使った。味は上々、品の良い「三平汁」だった。
自然と共に生きてきたアイヌの人たちに思いを馳せながら、自然の恵みがいっぱい入った「オハウ」をいただいた。
Commented by takarinn at 2009-05-12 17:46 x
白老のアイヌ民族博物館が、このようなサッチェブの販売?などを行うサービスをしてくれることを初めて知りました。
自然に逆らわない食生活は、きっとそのものの本来持っている真の旨みを味わううことができるのでしょうね。
それこそを”食の文化”と言い、普段の食生活は単に食欲を満たすだけの行為かも知れません。
隠居様の文にはいつも、深く納得し時に、今を反省させられています。
オハウというのもアイヌ語なのですね。三平汁は北海道ではよく食べましたが、アハウというと何か別の料理に思えてしまいます。
今日は読みながら、涎をたらし?そうでした。
Commented by Wako at 2009-05-12 20:45 x
はじめまして、「かもめや」さんのところでは、いろいろと大変失礼いたしました。こちらの方にもお邪魔させていただきますが、良いでしょうか?
北海道生まれの私なのに、サッチェブという食品を初めて知りました。
数年前、池澤夏樹著『静かな大地』を読んで、とても感動したことを思い出しています。淡路島から移住した無名の武士たちが、アイヌの人々と共に静内周辺の地を開拓してゆく物語です。アイヌの人々の、自然から得た食を大切に分かち合う叡智と、自然に対する無垢な畏敬の念とを、その小説から学びました。
食だけでなく、ご隠居様の生活全ては、ほんとうに、これは、もう、贅沢の極みというべきです。
埼玉に住む当方の夕食、本日は余り物の寄せ集めという、余りに貧しいものでした、、、(ダイエットのつもりじゃないのに! 笑)
別項、エキサイトブログを参考に、わたしもロハスな食事をしたい!
Commented by 隠居 at 2009-05-12 20:59 x
>Wakoさんへ
お待ちしておりました。実を言うとWakoさんの出番が遅いな~と気になっていたのです。いつでも遊びに来てください。時には埼玉の話題なども提供してください。
Commented by 隠居 at 2009-05-12 21:08 x
>Takarinnさんへ
新巻鮭やスモークドサーモンに慣れた舌には、最初はサッチェプの味は物足りなかったです、正直言って。ところが噛んでいるうちに口の奥のほうから旨味がじわじわ出てくる、と言う感じでした。サッチェプの取り寄せなどに関する情報はHP「アイヌ民族博物館」から検索できます。
Commented at 2009-08-03 13:53 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
by Go-in-Kyo-san | 2009-05-12 16:08 | 折にふれ | Comments(5)