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人生は夕方から楽しくなる。ン、ほんとかな?


by Go-in-Kyo-san
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仮名手本忠臣蔵

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先週の金曜日、女房と二人で歌舞伎を観に行った。女房と二人で劇場に行くなんて、新婚早々の頃、Nitty Gritty Dirt Band の演奏を聴きに行って以来実に三十数年ぶりのことだ。女房は歌舞伎を見るのは初めてだという。

出し物は「仮名手本忠臣蔵」。市川団十郎と片岡仁左衛門の二枚看板。観たのは夜の部で五段目山崎街道鉄砲渡しの場、同二つ玉の場、六段目与市兵衛内勘平腹切の場、七段目祇園一力茶屋の場、十一段目高家表門討ち入りの場、奥庭泉水の場、炭部屋本懐の場。忠臣蔵は歌舞伎の代表的な出し物でおよその筋はわかっており、初めて観たにしては楽しむことが出来た。女房は役者の鍛錬された演技にひどく感動していた。例えば団十郎演じる由良之助が酔って横になるシーンで、顔を扇子で隠して横になったまましばらく身じろぎもしない場面や、中村橋之助演じる平右衛門が高い所から飛び降りそのまま胡坐をかく場面など、「相当鍛錬しないとあのようなことは出来ないよね。それを毎日演じるのだから役者さんは大変だ」なんて変なところに感心していた。

七段目祇園一力茶屋の場は義太夫仕立てになっている。舞台下手に義太夫語りの座が出来て、そこで語られる義太夫に乗って演技が進行してゆくのだ。私は生で義太夫というものを聴いたのは初めてだった。聴いたおかげで落語の「寝床」という噺が出来上がったわけがようやく理解できた。「寝床」は、お店の旦那が長屋の連中を呼んでご馳走を振舞いながら義太夫を聞かせるという話なのだが、呼ばれたほうはなんだかんだ口実を作って聴きに行かない算段をするのだが、聴きに来ないと今月中に長屋から出て行ってもらうという脅しには勝てず、しぶしぶ 聴きに行くという段取り。ご馳走を食べながらつぶやく話が、「横丁の隠居はあの義太夫を聞いた後ギダ熱を患った、どうみても人間の声とは思えない、動物園の脇を通るとあんな声が聞こえる、まともに義太夫が頭にぶつかると即死だ、命が欲しければ頭を下げていな」などなど、いろんな悪口をいいながら酒をがぶがぶ飲んで、早いところ酔っ払って寝ちゃいましょうというやり取りがあるのだが、今回本物の義太夫というものを聴いて、これらの悪口の意味が良くわかった。義太夫というのは芝居小屋で芝居と一緒に聴くから聴いていられるのであって、あれを普通の家で、ましてや素人がやったらまさしく「寝床」だということが良くわかった。

今回の芝居見物で忠臣蔵を楽しんだのは一番だが、「寝床」の成り立ちが理解できたことは副産物としては大きな収穫だった。
by Go-in-Kyo-san | 2009-10-12 15:40 | 折にふれ | Comments(0)